昔の陶器瓦の屋根の頂上には棟があり、のし瓦や冠瓦によって棟を形成しています。
棟は「屋根の心臓部分」といっても過言ではありません。
棟には「葺き土(ふきど・ふきつち)」と呼ばれる棟下地のための土が詰められています。
さらに、葺き土を守るための「漆喰(しっくい)」が詰められています。
棟が崩れてくると他の瓦にも影響を及ぼし、屋根全体がガタガタになる恐れがあります。
また、棟からの雨漏り被害も多くそうなるととても厄介です。
棟工事には大きく分けると「漆喰の詰め直し工事」「棟の取り直し工事」「棟の取替工事」があります。
よく棟の下にある三日月の形をした白いものが漆喰です。
正確には面戸部分に詰める漆喰などで面戸漆喰(めんどしっくい)と呼ばれています。
この漆喰は、棟の下地である葺き土を保護しています。
漆喰がボロボロでは雨水が葺き土に浸入して棟を崩す原因にもなります。
では棟の取り直しとは、冠瓦の下にのし瓦が何段か積まれますが棟に使用される瓦に隙間があると、棟を崩す原因になります。
雨水が入らない造りになっているのですが、経年により土が痩せることにより、微量な雨水が浸入して棟が崩れてしまうため、棟の取り直し工事が必要になってきます。
「棟が歪んでいる」「真っ直ぐ通っていない」「のし瓦がガタガタ」なのに、棟の取り直し工事の提案をせずに「漆喰詰め直し工事」を提案する場合があります。
そんな会社は屋根知識が非常に低いため要注意です。
漆喰詰め直しをしても肝心な棟瓦がガタガタでは雨水が浸入していることは変わりません。
棟は崩れ続け、また詰め直した漆喰も剥がれてくることでしょう。
今回の工事では漆喰も確かに劣化はしていましたが、漆喰詰め直しのみでは全く意味がなかったので、棟の取り直し工事を優先にする必要がありました。